想定されるケース①

【Aさん(42歳)の場合】
都内で中華料理店を経営している。
妻と子供2人(共に小学生)の4人家族。

常連さんにも恵まれ、お店も開店から8年目を迎えられた。
この2,3年で社員やパートを増やし、店内設備にもお金をかけた。
売上も順調に上がっているし、プライベートでも何も不自由ない生活をしていた。

しかし、新型コロナウイルスが生活を一変させた。
コロナ禍の影響で売上が大幅に減ってしまい、通常の3分の1程度の売上が続いた。
国の補助金ももちろん申請したが支給されるのは遅いし、そもそも家賃や人件費、店内の内装リフォームや設備の新調などで費用がかさみ、全くと言っていいほど足りていない状況だった。
せっかく自分についてきてくれた社員やパートも、先の見えない状況の中で雇い続けるのは、もう物理的に無理だった。
せっかくお金をかけて充実させた店内もとうとう家賃を払えなくなり、賃貸契約を解除するしかなかった。

そして、自宅は賃貸ではなく、ローンを組んで購入しているものだ。
毎月のローンの返済がどうしようもないくらいの重荷となってのしかかった。
妻は元々スーパーでレジ打ちのパートをしていたから、出勤数を増やしてほしいとお願いしたが他に一緒に働いている人の都合もあるし、そんなすぐに劇的に増やしたりできない。
自分も料理人としての経験を活かして、飲食店の求人を探してはみたが年齢的に厳しいものがあるし、何よりもこのご時世に求人を出している飲食店など皆無といっても過言ではなかった。
飲食しかやってこなかった自分が、この年齢で未経験の職を見つけることも不可能に近かった。

なけなしの貯金も底をつき、いよいよ夜逃げ、自己破産という文字が頭をよぎり、
あるときは自分の生命保険の契約内容を改めて確認したこともあった。

精神的にどうしようもないところまで追いつめられて、全てを投げ出してしまいたくなったとき、「任意売却」という単語を知った。
調べていくうちに夜逃げや自己破産などしなくても良いのかもしれない!と思えるようになった。
ただ、実際にどうしたらいいのか見当もつかない。
なので、もうダメで元々というような、半ば開き直り状態で相談の電話をしてみた。

それが人生の分岐点だった。
結果的に今はもちろん夜逃げなんてしていない。
一家離散ってこともない。
今まで通り暮らすことができている。
相談をして自分に余裕ができたことで、仕事も何とか見つかり、ギリギリのところで立て直せた。
自分一人では何もできないけど、ちゃんと相談できる人がいれば何とかなるということを知った。
自分の生命保険の内容を確認したとき、本当に思い止まって良かったと今心から言える。